日本では車を買ったら自動車保険(任意保険)に加入するのが常識とされています。
自動車の保険料は特に若年層にとってはかなり痛い出費で、加入することをためらう人も多いと思います。
ちなみに自動車保険の加入率は現在7割程度、約3割の人が加入していないことになります。
「だったら別に無理して加入する必要ないんじゃ…?自賠責もあるし…」
って思う人もいるかもしれませんが、車を日常的に乗る人は必ず加入をすべきです。少なくとも私は「生命保険の10倍くらいは優先的に…」と考えます。
というのも保険を掛けずに自動車事故を起こしてしまうと破産しかねないからです。
自賠責保険の補償内容について
「自賠責保険に入っているため任意の自動車保険は必要ない?」と考えている方も少なくないはずです。私も以前はそう感じていました。
「本当に自動車任意保険が必要か?」「自賠責だけでは足りないのか?」まずは自賠責の補償内容について確認してみましょう。
自賠責保険の補償金額
- 死亡補償(葬儀費や被害者または遺族の慰謝料など)…1名につき3000万円
- 高度障害補償(事故で障害が残った場合)…1名につき4000万円(障害の度合いにより金額が変わる)
- 障害補償(事故でケガをした際の治療費・休業損害費・慰謝料など)…1名につき120万円
基本の補償はこれらの3つの対人補償となります。意外と知らない人も多いようですが物損に対する補償はありません。対物補償はないので事故でモノを壊したときや相手の車を傷つけてしまった場合は自己負担となります。
高額請求の事例
「対人補償が3000万や4000万円分あるのなら任意保険はいらない!」と感じる方もいるでしょう。
しかし実際には自動車事故で必要となる賠償額は非常に高額になることが多いのです。
軽い事故なら自賠責でも足ります。しかし任意保険がなければ破産してしまうような事故が起こることも珍しくはありません。
損保協会の調査によると自動車事故での損害額がいかに高額になるかということが解ります。それぞれの高額判決例を見てみましょう。
人身事故の高額判決例
下記は近年実際にあった高額判決の一例です。カッコ内は判決年月日です。
損害額 | 被害者職業・年齢 | 被害者態様 |
---|---|---|
5億2853円 (2011.11.1) |
眼科開業医・41歳 | 死亡 |
3億9725円 (2011.12.27) |
大学生・21歳 | 後遺障害 |
3億9510円 (2011.2.18) |
大学生・20歳 | 後遺障害 |
3億8281円 (2005.5.17) |
会社員・29歳 | 後遺障害 |
参考資料:日本の損害保険-ファクトブック
死亡事故はもちろん、相手に障害が残ってしまった場合の損害金はとてもではありませんが3000万や4000万では足りません。被害者がまだ若く就労が見込める年数が長い場合、見込み収入が加算されるため億を超えることは確実です。
だからこそ任意保険で「無制限」の対人補償をかけておくべきだと言われているのです。この表を見てわかるように特に20代などの若い相手に障害が残るような事故を起こしてしまった場合はどうしても損害額が億を超える金額になってしまいます。
物損事故の高額判決例
同様に今度は物損事故の高額判決を見てみましょう。
損害額 | 被害物件 |
---|---|
2億6135円 (1994.7.19) |
積荷(呉服・洋服・毛皮) |
1億3580円 (1996.7.17) |
店舗(パチンコ店) |
1億2037円 (1980.7.18) |
電車・線路・家屋 |
1億1798円 (2011.12.7) |
トレーラー |
ただ単に相手の車に傷をつけてしまった程度ではそこまで修理費などの賠償金がかかりません。しかし上記の表のような場合は非常に高額の損害額を請求されることがあります。以下参考例です。
- 高額の荷物を積んだトラックにぶつかってしまい、荷物にも損害が出てしまった
- 国の持ちものである電柱やガードレールを壊してしまった
- 店舗に突っ込んでしまった
- 電車との事故
対物補償は3000万程度で掛ける人も多いようですが支払う保険料はそれほど大きく変わらないので対物も対人と共に「無制限」にしておくべきです。
自分自身に過失がなくても保険を掛けていないと…
相手の過失が100%で自分の過失が0%なら相手に修理費用や治療費用などを支払って貰えばいいので自分が負担するお金は通常ならありません。
しかし相手が保険に加入していない「無保険車」なら話は違います。相手に損害額の支払い能力がなく泣き寝入りになることも少なくはありません。
自賠責にも加入していない無保険車と事故をする確率は低いです。しかし免許を取り立てで親の車で練習をしていた…など様々な理由で無保険の状態で運転している人も居ます。
高額過ぎる賠償金が支払えないと言って、中には連絡を無視したり最悪の場合引っ越して居場所が分からなくなるような加害者も居ます。
任意の保険には無保険車と事故をして十分な賠償を得られなかったときに補償してもらえる「無保険車損害(障害)特約」が付いています。特約と付いていますが原則基本的なプランに含まれています。
この補償があれば泣き寝入りをすることはありません。
まとめ 自賠責だけでは足りない
自動車事故は高額判決になることもあり、自賠責保険で保障される金額分では足りないこともあります。数十万足りない程度なら問題ありませんが、億を超えることもあるので破産を防ぐためにも任意保険で「無制限」の補償に入っておいた方がいいでしょう。
高額判決にならない場合でも任意保険は「対物」の補償があるため加入しておく価値は十分にあると思います。
交通事故の中でも頻度が高い「追突事故」などの場合は対物補償が必要になることが多いです。相手にもこちらにもケガはなく医療費などの賠償をする必要はないが、車の修理費といった費用を賠償すしなければならないことが多いからです。
10:0の事故で自分の過失が0であれば負担する必要はありません。しかし車が少しでも動いていれば8:2や7:3といった過失割合になることがあります。そうなれば修理費の内の何割かを支払う必要があります。車に乗っていれば物損事故を起こす確率は少なくないのでやはり任意保険に加入しておいたほうがいいでしょう。