自動車保険には標準プランに上乗せして保障を手厚くする「特約」と呼ばれるものがあります。
特約には以下2点あります。
- ほぼ必ず標準プランにセットで付いてくるもの
- 契約者のニーズに合わせてオプションで付けるもの
本ページでは自動車保険の特約の種類のうち主に後者のオプションで加入するタイプの特約を中心に「加入すべきものとそうでないもの」を解説します。
Contents
任意で加入する特約の主な種類
特約はすべて合わせると数百種類以上もあると言われています。保険会社によっては変わった特約があることもあり販売する担当者自身もすべて覚えている人は少ないでしょう。
ここでは一般的に加入する方が多い代表的な特約をご紹介します。
対物超過特約
自動車保険は事故を起こしてしまった場合、相手側に保険を使って対物賠償保険金を支払います。いわゆる対物保険と呼ばれるものです。
対物超過特約:相手側の車の修理費が時価額よりも高かった場合に備えるための保険
時価額:事故が起きた場所や時間において、同一の用途の種類・車名・形式・仕様・初年度登録年月(車検証に書かれている新車購入した年月日)で同じくらい消耗・劣化している車の「市場販売価格相当額」のこと
簡単に言えば「車を売却する時の査定額のようなもの」が時価額ですね。
査定額は売却する中古車販売業者等の諸経費が関わってくるので厳密には時価額と一致することはありませんが・・・時価額は法的なルールに基づいて決定されます。
メインの補償となる対物賠償保険は補償額を「無制限」にしていても修理費用が時価額を超えるとその分は支払ってもらえません。何故なら法律上、自分に100%責任がある事故でも時価額以上の費用は負担する必要がないとされているからです。
しかし修理費が時価額を超えてしまうことはよくあります。
車は日常的に5年、10年乗ってしまうと時価額が数十万~数万円まで落ちてしまいます。10年落ちの車なら時価額が2、3万円程度ということはざらにあります。
通常の対物賠償保険では補償額を無制限に設定していても時価額が2万円なら2万円までしか保険金は降りません。
こちらが支払いをしなければ相手側が納得せず、示談交渉がスムーズにいかなくなることもあるのです。そんな時に役立つのがこの特約です。
例えば100%こちらに責任がある事故をしたとします。
そして相手の車の時価額が50万だった場合、修理費が70万なら時価額を超えた20万円分は保険で補うことができません。
支払う義務そのものはありませんが示談交渉をスムーズに進めたいならこの20万円もこちらが負担したほうが良いでしょう。
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対物超過特約はこの超えてしまった分を負担してくれます。負担してくれる金額はほとんどの保険で「時価額と修理額の差額×過失割合」となります。上限額は50万円となっているところが多いです。
弁護士特約
自動車事故で損害を受けたとき賠償請求のために弁護士に依頼したり、弁護士に法律相談をした場合に費用を負担してもらえる特約です。
保険によって補償される金額は違います。三井住友海上の場合は弁護士費用上限300万円・相談費用上限10万円となっています。他社の保険も同様の金額となっている場合がほとんどです。
注意しておきたいのは交通事故被害者となった場合のみ使えるということ。自分に100%過失がある加害者になってしまった場合には使えません。また事故の種類によっては使えないケースもあります。
実は自動車保険は他の保険に比べて保険金が下りにくいと言われています。相手に100%過失があっても相手の保険金が下りず泣き寝入りとなるケースも少なくありません。
そのため弁護士特約は人気のある特約の一つとなっています。
個人賠償責任特約
自分や家族が日常生活における事故で相手にケガをさせたりモノを壊してしまったときに生じた損害金を補償してくれます。
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補償される事故の種類は保険によって少し違いますが例えば自転車で他人にケガをさせてしまった場合などに適応されます。
この特約は自動車事故以外の事故に備えるものです。自動車事故で起こしてしまった損害には適応されませんので注意しましょう。
ファミリーバイク特約
自動車だけでなく125㏄以下の原動機付自転車の運転中に起こした事故を補償してくれる特約です。対象となるのは契約者だけでなく配偶者や同居の親族・別居の未婚の子供といった家族にも適応されます。
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対人・対物・人身傷害保険の保険金が適応されることがほとんどですが、保険会社によっては人身傷害なしの対人・対物のみ保障される特約が選べる場合もあります。
参考記事:原付の保険は任意保険より自動車保険のファミリーバイク特約が安くてお得
車内身の回り品特約
社内手荷物等特約とも呼ばれる特約で車両保険を付けている場合のみセットで契約できる特約です。
事故によって車や二輪自動車に積んだ持ち物が壊れてしまったとき、その修理費などの損害金を補償してくれる特約です。補償されるものには制限があります。以下のようなものは含まれない場合がほとんどです。
- 現金
- 眼鏡
- 携帯電話
例えばトランクにカメラやゴルフバッグなどを置いていて事故によりそれが故障した場合や、車上荒らしに遭って積んでいたものを盗難された場合などには補償されます。
そのほかの特約
その他にも以下のような特約があります。
特約名 | 説明 |
---|---|
搭乗者損害特約 | 車の事故でケガをして入通院した場合にかかる医療費を補償 |
身の回り担保特約 | 車両保険では補償外となるトランク内の身の回り品の損害を補償 |
おりても特約 | 車で出かけた先での事故補償する特約。搭乗中以外の事故が対象 |
新車特約 | 新車が大破した場合に新しく買い替えるための金額や修理費を補償 |
ペット搭乗中担保特約 | ペットが搭乗中に事故をしケガや死亡した場合にかかった葬祭費や治療費の補償 |
免ゼロ特約 | 車両保険の免責金額(自己負担額)が0円になる特約 |
子供特約 | 子供が親名義の車を運転てしていて事故した場合の補償 |
臨時運転者特約 | 友人知人が運転して事故をした場合の補償 |
運転者限定特約 | 本人型・夫婦型・家族型のいずれかを選び運転者を限定することで保険料が割り引かれる |
これでもまだほんの一部に過ぎません。自動車保険の特約は他にもたくさんあります。しかし、そのほとんどは担当者さえも憶えていないようなものばかりです。
優先すべき特約と不要な特約
数ある特約の中から、優先してつけておくべき特約と基本的には不要となる特約をご紹介します。
優先すべき特約は2つだけ
優先すべき特約は2つのみです。
- 対物超過特約
- 弁護士特約
示談交渉をする際や賠償請求を行うときなど交渉をスムーズにするためには必要となる特約です。
対物補償額を超過した場合も弁護士費用が必要となった場合もどちらも高額になることがほとんどなので特約をつけておけばもしもの時に役立ちます。
しかし「時価額を超えて必要となった修理費を支払える」「弁護士費用を支払える」ほどの金銭的な余裕がある場合は不要になります。
- 対物超過特約の補償:最大で50万円まで
- 弁護士を雇うような事態:一般的に50万~100万円程度あれば弁護士を雇うことは可能
そのほかは必要に応じて加入しよう
その他の特約は必要に応じて加入しましょう。
例えば個人賠償責任特約やファミリーバイク特約は家族がいる場合には必要になる場合があります。
しかし個人賠償責任特約などの自動車に関すること以外の補償は自動車保険の特約としてではなく、共済や生命保険の特約で掛けたほうが保険料が安くなる場合もあります。
あくまでも「自動車事故」に関する保険がメインです。それ以外の特約を付ける場合は一度本当に必要か、お得かどうかを確認するようにしましょう。
標準の保険でカバーできる特約は不要
例えば入院や通院した際の治療費を補償してくれる搭乗者傷害特約は、人身傷害保険を付けている場合は不要です。
人身傷害保険は治療費や仕事を休んだために生じた損害など、実際に負担した費用に対して支払われます。
入院や退院した際の治療費もこの人身傷害保険に含まれるため、搭乗者傷害特約は不要になります。
まとめ 保険は掛ければキリがない
保険は万が一に備えようとするとキリがありません。特約に関しては便利なものも沢山ありますがあれもこれもと特約を付けてしまうと保険料が高くなってしまいます。
本当に必要かどうかをきちんとチェックしておきましょう。「万が一の時に入っておかないと生活できなくなってしまう」といったケース以外は不要です。
例えば事故で相手が死亡してしまった場合は数億円以上の賠償責任を負わなければならない場合があります。多少金銭的に余裕があっても普通の会社員が数億円以上の賠償金を支払うのはほぼ不可能でしょう。
こういったケースが起きたときのために対人保障は絶対「無制限」にしておくべきでしょう。
一方弁護士を雇わなくてはならなくなった場合など「万が一」の場合に必要になる負担が数十万円~百万円程度なら、ある程度の金銭的余裕や貯蓄があれば解決できます。最悪の事態となっても貯蓄で解決するなら問題になりません。
補償内容や追加する特約を選ぶときは「万が一」支払うことになった場合、自分で対処できるかどうかという点を基準に考えましょう。