学資保険

学資保険で節税出来るは本当?学資保険の所得控除について正しく解説

「学資保険を払うと節税にもなりますよ」という保険会社のセールストークを聞いて、学資保険に加入した人もいるかもしれません。

学資保険を節税という観点から見た場合、きちんと理解しておいたほうが無駄な保険料を払わずに済む場合が多いです。

本ページでは特に「学資保険に焦点を当てて所得控除について」解説します。

支払って節税するという意味

経費にすると節税できるという話はよく聞くところですが、支払った分だけ税金が安くなるというのは、ほとんどの場合はあてはまりません。

何故なら経費に出来る保険料には限りがあるからです。

節税になる経費

節税になる経費の大原則は、収入を獲得するために直接要した出費です。

  • 個人事業主の所得になる事業所得:仕入れ代金や水道光熱費等の運営経費
  • アパート経営等による不動産所得:アパートの修繕費や固定資産税、火災保険料など

給与所得者や年金受給者はかかった経費を見積もるのは難しいこともあり、概算経費にあたる給与所得控除額や公的年金等控除額(収入の何割か)を経費とみなしています。

経費による節税幅

個人で国に支払う所得税や地方に払う住民税を計算する上での「所得」に関しては、原則的に下記のように計算します。

所得 = 収入 - 経費 (*)

このような形で計算する所得は10種類あります。(所得によっては上記の数式が少し変わります)

<所得の種類>
事業所得、不動産所得、利子所得、配当所得、給与所得、雑所得、一時所得、譲渡所得、山林所得、退職所得

所得税や住民税(所得割)の税金計算は、下記の数式で計算します。

課税所得×税率

税率は住民税が一部の自治体を除き10%です。所得税が最低で5.105%ですが、課税所得に応じて上昇します。

経費を10万円増やして「節税」した場合でも、税率が10%であれば1万円の節税ですし、20%であれば2万円の節税となります。つまり課税所得が大きいほど、節税幅は大きくなります。

所得控除と税額控除

実際には収入獲得のための出費以外でも、節税になる出費というのはあります。

どの所得を得ても節税として広く認められるものがあり、それがこれから解説する所得控除税額控除になります。

出費はほとんど対象にならない税額控除

税額控除とは上記の税金計算の式で求めた税額を引き下げるものをいい、広く利用されているのは住宅ローン控除です。

住宅ローンの年末残高に一定の率(多くの場合1%)をかけたものを、税額から控除します。

住宅ローン残高に関しては当初数年は千万円単位になりますので、10万円単位で税額を引き下げることができます。しかしこれは出費ではなくローンの残高に比例した節税策です。

税額控除にはその他配当控除や寄付金税額控除などもありますが、出費が反映されるのは寄付金税額控除ぐらいであり、それも出費の30%~40%で計算します。

所得控除とは

所得控除上記の計算式(*)で求めた所得をさらに引き下げるもので、所得控除によって引き下げたあとの所得が課税所得となります。

所得控除は、扶養控除・障害者控除のように本人・扶養親族の属性によって一定額(38万円など)を控除する人的控除と、医療費控除や社会保険料控除のように出費による物的控除に分かれます。

どちらにしても所得から差し引きますので、税率が高くなるほど有利に働きます。

学資保険の扱い

学資保険はどのような扱いになるのかですが、所得控除のうちの生命保険料控除に該当します。

生命保険料控除という枠によって課税所得が控除され、税金が安くなる。つまり節税が出来るというわけです。

生命保険料控除は全額所得控除ではない

所得控除の中には社会保険料控除のように、支払った全額を控除できるものがあります。社会保険料控除は10万円増えれば、税率が10%であれば1万円の節税ですし、20%であれば2万円の節税となります。

しかし生命保険料控除は、支払った全額が控除できるわけではありません。

  • 所得税と住民税
  • 平成23年以前契約(旧契約)と平成24年以降契約(新契約)

上記で計算の仕方が異なっており、下記の通りになります。

(表1 旧契約 生命保険料控除の額:所得税)

年間の支払保険料=A 生命保険料控除額
2.5万円以下 A
2.5万円~5万円 A/2+1.25万円
5万円~10万円 A/4+2.5万円
10万円以上 5万円

(表2 旧契約 生命保険料控除の額:住民税)

年間の支払保険料=A 生命保険料控除額
1.5万円以下 A
1.5万円~4万円 A/2+7.5千円
4万円~7万円 A/4+1.75万円
7万円以上 3.5万円

(表3 新契約 生命保険料控除の額:所得税)

年間の支払保険料=A 生命保険料控除額
2万円以下 A
2万円~4万円 A/2+1万円
4万円~8万円 A/4+2万円
8万円以上 4万円

(表4 新契約 生命保険料控除の額:住民税)

年間の支払保険料=A 生命保険料控除額
1.2万円以下 A
A/2+6千円 A/2+6千円
3.2万円~5.6万円 A/4+1.4万円
5.6万円以上 2.8万円

支払保険料の額が低ければ全額控除にはなりますが原則は全額控除ではなく、さらに上限額もあります。

例えば、(旧契約の一般生命保険料控除にあたる)学資保険の保険料を年1万円払った場合は、所得税・住民税とも1万円控除されます。

しかし保険料5万円の場合は所得税3.75万円・住民税3万円、10万円の場合は上限額(所得税5万円、住民税3.5万円)となります。

学資保険本体と子供医療保障特約の違い

生命保険料控除ですが、大きく一般の以下3つに分類されます。

  • 「生命保険料控除」
  • 「個人年金保険料控除」
  • 「介護医療保険料控除」

学資保険(子ども保険)は教育資金を用意するための学資保険本体と、子どもの医療保障を備えた特約があります。

<学資保険本体と子どもの医療保障の違い>

  • 学資保険本体:一般の生命保険料控除に該当
  • 子供の医療保障:介護医療保険料控除に該当

介護医療保険料控除は平成24年以降の契約から適用されるもので、医療保険(医療特約)や介護保険にあたる保険料の支払が対象です。平成23年以前契約では介護医療保険料控除は無く、医療保険や介護保険の支払は一般の生命保険料控除に該当します。

上記の表1~4ですが、一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除(新契約のみ)のそれぞれで計算します。

子供医療保障特約つき学資保険の控除計算例1

平成24年以降の契約で、学資保険本体の年間保険料が12万円、子ども医療特約の年間保険料が1.2万円であれば、所得税の一般生命保険料控除は4万円、介護医療保険料控除が1.2万円で計5.2万円の控除が受けられます。

住民税の一般生命保険料控除は2.8万円、介護医療保険料控除が1.2万円で計4万円の控除が受けられます。

子供医療保障特約つき学資保険の控除計算例2

上記の計算例で、契約が平成23年以前の場合はどのような計算になるのでしょうか?
所得税の一般生命保険料控除が5万円、住民税の一般生命保険料控除は3.5万円となります。

子供医療保障特約つき学資保険であれば、介護医療保険料控除がある平成24年以降契約のほうが節税の観点から有利になります。

一方、子供医療保障特約つきでない場合は平成23年以前契約のほうが控除限度額は大きくなります。

節税する上での注意点

平成23年以前契約と平成24年以後契約では、控除上限額が異なります。前者の一般生命保険料控除・個人年金保険料控除では各5万円ずつ、後者の一般生命保険料控除・個人年金保険料控除・介護医療保険料控除は各4万円ずつです。

全体の上限額は12万円ですが、平成23年以前契約と平成24年以後契約が混在している場合は上限額の計算が複雑ですので注意が必要です。

例えば平成24年以後に契約した学資保険で一般生命保険料控除額4万円、介護医療保険料控除額4万円になり、平成23年以前契約の個人年金保険料控除額が5万円となった場合を考えます。

全て足せば13万円ですが、この場合でも全体の上限額は12万円で生命保険料全体で12万円超の控除はできません。

子供医療保障特約を利用する上での注意点

自治体によっては、子ども(概ね中学生ぐらいまで)の医療費を実質無料にしているところがあります。中には、所得制限を設けている自治体もあります。

子どもの医療費がかからないにも関わらず、子供医療保障特約をつけるのは、節税で有利だとしても意味のあるものだとは思えません。

まとめ

学資保険で節税できるのは本当ですが、節税幅は限られています。

そもそもどう節税になるかを誤解されている方もいらっしゃるので、節税のしくみの理解が必要ですが、学資保険のような生命保険に関してはさらに計算の仕方が複雑です。

また学資保険(子ども保険)の契約年・特約のつけ方によっても変わってきます。

とはいえ、所得税が給与から徴収されるサラリーマンにとっては税還付の有効な手段ではありますので、毎年10月頃保険会社から送付される保険料控除証明書をなくさず、年末調整や確定申告で利用しましょう。

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