個人年金は保険という名称が付いていませんが生命保険控除として所得控除が可能なので生命保険の一種とされています。
実際多くの生命保険会社で個人年金の提供を行っています。
私達が現在支払っている国の年金だけでは老後を賄えないことはもう目に見えているので、20代のうちから個人年金を検討する人も少なくありません。
個人年金は冒頭でも記述した通り、所得から生命保険控除を受けられるので節税効果もあるため、貯金するよりも得だと考える人も多いと思います。
しかし、個人年金に関しては(特に若い世代の会社員は)基本的に不要であると考えています。
何故なら個人年金は明らかに投資効率が悪いからです。
Contents
個人年金は投資の一種
個人年金は将来定年退職した後に受け取るために、働き盛りの若いうちからお金を積み立てていくというタイプの金融商品です。
生命保険のカテゴリに入っていますが、ケガや病気など「もしもの時」に備える医療保険や死亡保険といった保険とはまったく性質が違います。
個人年金は積み立てた金額以上のお金を受け取ることができます。きちんと払込期間未払いをすることなくしはらえば、儲かるという仕組みになっているのです。
死亡した場合は積み立てていた分のお金が返ってきますが医療保険や死亡保険、がん保険のように十分な保障があるわけではありません。つまり、個人年金は保険というよりも投資商品と考えるべきです。
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個人年金の積み立てで、いくら得をする?
個人年金は「得をする投資商品」、では個人年金で一体どのくらい得をするのか?個人年金の中でも人気の高い3つを表にまとめました。
保険会社 | 累計払込料 | 受取累計額 | 返戻率 |
---|---|---|---|
住友生命 | 1,116万円 | 1,413万円 | 126.6% |
明治安田生命 | 1,260万円 | 1,430万円 | 119.1% |
アフラック | 1,114万円 | 1,200万円 | 107.7% |
住友生命の個人年金は126.6%と個人年金の中でも返戻率(支払う保険料の総額に対して受け取ることができる保険金の割合のこと)が高く設定されています。単純に計算すると、29万7,000円得をするという計算になります。
個人年金は月々に支払う保険料を増やせば増やすほど返礼率は高くなるという特徴があります。また加入する年齢が若く、支払う期間が長くなる場合も返戻率は高くなります。
もう1つのメリットは税金控除
個人年金は実質投資商品とほとんど同じ仕組みですが保険というカテゴリになっているため、年末調整・確定申告の際に生命保険料控除として税金の控除を受けることができます。
控除される金額は年間で支払った保険料に応じて決まりますが上限があります。
- 所得税:年間8万1円以上の支払いで4万円控除
- 住民税:5万6001円以上の支払いで2万8000円控除
個人年金はほとんどが月々1万以上なので、年間8万以上支払うことになるでしょう。
つまり個人年金に加入する場合、その多くが上限となる所得税4万円・住民税2万8000円の所得控除を受けられることになります。
所得控除とは
累進課税制度である日本の所得税及び住民税は所得によって決定されます。高い所得を得ている人は税率も高く、所得の低い人は税率が低くなっています。
さてこの所得という言葉ですが、これは収入とは違います。
一般的な会社員の場合、収入(給料)から所得控除が引かれたものが所得となります。
収入-所得控除=所得
所得控除には大きく以下のようなものがあります。
- 社会保険控除:健康保険と厚生年金
- 基礎控除
- 生命保険控除
基礎控除とは何かというと、会社員の場合収入によって国が定めた控除額が設定されています(控除額は下の表の通り)。
給与等の収入金額 (給与所得の厳選徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 |
---|---|
1,800,000円以下 | 収入金額×40% 650,000円に満たない場合には650,000円 |
1,800,000円超 3,600,000円以下 | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,000円超 6,600,000円以下 | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,000円以下 10,000,000円以下 |
収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,000円以超 | 2,200,000円(上限) |
引用元:No.1410 給与所得控除|国税庁
所得控除には生命保険控除というものがあり、収入から上限年間8万1円以上の支払いで4万円控除・住民税では5万6001円以上の支払いで2万8000円控除が受けられるということです。
この控除によって減らすことができる税金の金額は、以下の通りです。
所得金額 | 所得税の軽減額 | 住民税の軽減額 | 合計軽減額 |
---|---|---|---|
196万~330万 | 4,000円 | 2,800円 | 6,800円 |
331万~695万 | 8,000円 | 2,800円 | 1万800円 |
696万~900万 | 9,200円 | 2,800円 | 1万2,000円 |
901万~1,800万 | 1万3,200円 | 2,800円 | 1万6,000円 |
20代の平均年収は約346万。この平均額で考えると、1年間で減らすことができる税金の金額は1万800円ということになります。
普通に貯金するよりはずっと良い
はじめに個人年金は投資効率が悪いのでお勧めできないと書きましたが、それでもただ貯金するよりはずっとましです。
2018年現在積立貯金の金利は高い銀行でも年間0.1%程度で、毎月15,000円ずつを30年間(総額540万円)積み立てても得られる利益は81,000円程度にしかなりません。
投資効率が悪い個人年金でも返戻率が10%あれば540万円の払い込みで54万円の利益となります。
また、貯金に税金控除はないのでその分個人年金は有利です。
しかし個人年金は預金にないデメリットがあります。
デメリット 解約時に損失が出る恐れがある
個人年金はきちんと支払い続ければお得で税金も控除できるというメリットをご紹介しました。
しかし大きなデメリットとなる「解約時に損失が出る」という点です。
具体的な例として、アフラックの個人年金を例に見てみましょう。
25歳で加入し、月々2万円を60歳まで支払うタイプの保険の場合。
60歳までの35年間支払い続ければ返戻率は101.52%で12万以上お得になります。税金控除も上限まで受けることが可能です。
しかし途中で解約する場合は、戻ってくるお金が支払った金額よりも少なくなってしまいます。解約した場合の返戻金を表にまとめました。
年齢 | 支払い保険料の合計 | 解約時の返戻金 | 返戻率 |
---|---|---|---|
26歳 1年目 | 24万円 | 9万7,261円 | 40.52% |
30歳 5年目 | 120万円 | 99万5,836円 | 82.98% |
35歳 10年目 | 240万円 | 217万8,100円 | 90.75% |
40歳 15年目 | 360万円 | 336万3,305円 | 93.42% |
45歳 20年目 | 480万円 | 461万7,724円 | 96.20% |
50歳 25年目 | 600万円 | 594万6,036円 | 99.10% |
52歳 27年目 | 648万円 | 649万444円 | 100.30% |
この表から最低でも52歳まで支払い続けなければ返戻金が支払った保険料を上回ることはありません。つまり約27年間は解約をすると損をしてしまうことになるということです。
返戻金を目的として加入したのに戻ってくるお金が低く損をしてしまうのなら解約できない、解約しにくいということになります。
保険の見直しができないというデメリットも伴っているということです。
仮に加入した後にもっと良い返戻率の保険を見つけたとしても解約すれば損をするので乗り換えられません。途中で生活が変わり支払いが厳しくなっても、今まで支払った分を損してしまうと考えるとなかなか解約することができません。
他の個人年金も途中で解約をすると損をしてしまう場合がほとんどです。つまり個人年金は流動性が低く、乗り換えや解約がしづらいという点が最大のデメリットとなります。
個人年金よりも投資信託のほうが期待リターンが大きい
個人年金は返戻率が高いものでも年間の利率を計算すると年利0.8%程度のリターンしか期待できません。
一方通常の投資信託なら大きな利益が出ないと言われている安定的な運用を目的としたものであっても、年利3%前後の利益が期待できます。
個人年金は税金控除などもありますが、それを合わせたとしても利益となる金額は投資に比べると非常に少なくメリットはあまり大きくありません。
投資を目的として個人年金をかけるのであれば、先進国債券のインデックスファンドに投資した方がリターンは大きくなります。
投資信託と個人年金、どちらを買うべき?
それぞれのメリットやデメリットをご紹介しましたが、2つを比較すると下記のようになります。
個人年金 | 投資信託 | |
---|---|---|
リターン | 小さい 高いもので年間0.8% 0.5%あれば良い方 |
小~中、種類による 低いもので2%程度 高いもので8%以上 |
リスク | 非常に小さい 途中解約以外で元本割れリスクはほとんどない |
小~中、種類による 元本割れリスクが生じるが、 極めて小さいものもある |
流動性 | なし。60歳まで払込する必要がある | 原則いつでも買付、解約(売却)が可能。 |
リスク面で比較すると、投資信託のほうがリスクはあります。しかし、投資信託の中でも債券型の投資信託はリスクが低く、個人年金と比べても変わらないほどの低リスクとなります。
リスクが同じくらいならば、投資効率(リスクに対するリターン)が確実に高い投資信託のほうが圧倒的にメリットが大きいと考えられます。
個人年金は60歳まで支払えばリターンが約束されていてリスクが全くないように感じますが、途中で解約すると返戻金が支払金額を下回る「元本割れ」となるリスクや、保険会社が倒産するといったリスクも考えられるためリスクが全くないというわけではありません。
税金控除を考慮しても支払う税金は年間1万前後しか減りません。上限があるため他の保険(医療保険等)を掛けている場合、投資効率はさらに悪くなります。
こういったことを考えるとやはり年間約0.8%のリターンと3%のリターンでは圧倒的に投資信託を選んだ方がメリットが大きいと感じます。個人年金に加入することを検討しているなら、それよりもリスクが低い安定した投資信託を選ぶことをおすすめします。
まとめ 預金するよりもお得だけど…
個人年金は税金控除があり解約しない限りは、ほぼ将来のリターンが約束されています。定期預金などの預金と比べるとお得で良い投資商品だと言えます。
しかし投資信託などの他の投資商品や金融商品と比較するとどうしても利率が低く解約時のデメリットが気になってしまい、見劣りしてしまいます。
返戻率や払い戻しの自由度を考慮すれば人気のある学資保険や低解約返戻金型終身保険の方が投資効率が良いです。
詳細記事:終身保険と学資保険(子ども保険)はどちらを選ぶべきか
個人年金の加入を考えている人の多くは以下のことを考えている人が多いでしょう。
「老後にお金を残しておきたい」
「若いうちからしっかり積み立ててお金を増やしたい」
個人年金はただ月々支払っていればいいので難しくなく加入しやすいというメリットもあります。
しかし近年は投資信託も非常に広まっていて、20代で投資信託を始める方も増えています。専門的な知識が必ず必要だというわけではありません。
また利率が高い投資商品を選んだほうが、将来的には多くのお金を手に入れることができます。
20代のうちはまだライフプランも定まっておらず、今後60歳まで払い続ける投資商品を購入するのは早いように感じます。
今後30・40代になって生活が変わり「解約したくても解約できない…」ということになるなら、流動性のある投資を選んだほうが賢い選択と言えます。
それぞれのメリット・デメリットをしっかりチェックし、自分に合ったものを選びましょう。
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10年くらい前は、保険は生保会社の販売員を通じて加入するのが当たり前でしたが最近は保険の窓口を始めとする保険相談サービスを利用する人が増えてきました。
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