車両保険は自動車保険の中でも最も保険料が高額となる補償です。車両保険を付けるだけで年間数万円以上保険料がアップしてしまうこともあります。
そのため「車両保険は本当に必要な補償なのか?」「加入しておくべきなのか?」と疑問を抱いている人も多いでしょう。
車両保険が必要かどうかは、自動車保険の等級制度をきちんと理解すれば解ってきます。
基本的にはローンが残っている車を持っているのなら加入しておいた方が良いですが、必要のないケースもあるかもしれません。
本ページでは「車両保険が必要かどうかを見極めるためにしっておきたい等級制度について・車両保険の必要性についてのポイント」を詳しくご紹介していきます。
Contents
自動車保険の等級制度とは?
自動車保険には全国共通の「等級制度」というものが適応されています。等級は1から20までに区分されていて、新規契約の場合は6等級から始まります。
この制度に基づき等級が決められ、各保険会社が等級に応じた保険料を設定しています。等級制度について簡単に要約すると以下のようになります。
- 無事故で保険料が安くなる
- 保険を使うと保険料が上がる
- 保険を使わなければ事故をしても等級に影響はない
関連記事:自動車保険の等級とは?保険料を大きく左右する等級の考え方を解説
等級は事故をしない優良なドライバーがお得に自動車保険に加入できるよう、無事故で1年間過ごすと等級は上がっていくシステムになっています。
等級は上がれば上がるほど保険料の割引率がアップしていきます。1年間無事故なら翌年は1等級アップします。
1年間の間に保険を使用して補償を受けると、翌年度の等級は下がります。その分割引率は下がってしまい、保険料は上がることとなります。
等級が下がるだけでなく、事故をした場合は「事故有等級」と呼ばれるものに区分されてさらに割高になります。これは同じ等級で事故をした人と事故をしていない人の保険料に差をつけるための仕組みです。
事故後3年間無事故なら、「事故有」から「無事故」という分類になり、割高ではなくなります。
もし事故をしても、保険を使って補償を受けなければ等級が下がることはありません。等級は「事故をしたかどうか」ではなく「保険を使ったかどうか」という点に左右される仕組みになっています。
少額でも保険を使うと等級は下がってしまう
ここまで解説してきた通り保険を使うと翌年は等級が下がります。もしその保険でおりた金額が少額であっても、その金額に関係なく等級は下がってしまいます。
もし車庫で車をぶつけてしまったときの傷を直すために車両保険を使って修理費3万円の補償を受けたとします。
この場合は「事故」の部類に入らないように思われますが、少額であっても車両保険を使ってしまえば等級はダウンしてしまいます。
金額を問わず、基本的には相手がいる事故なら3等級・自損事故なら1等級下がることとなるので注意しておきましょう。
7等級から3等級ダウン事故で保険料はどのくらい変わる?
保険の加入から1年経ち、無事故だった場合は6等級から7等級へとアップします。
しかし7等級となった年に1度車と衝突して事故を起こしたとしましょう。この事故で保険を使うと3等級下がり翌年から4等級になってしまいます。
※対人の衝突事故等は通常3等級ダウン事故となります。詳細はこちら
ご紹介してきたように、保険さえ使わなければ事故をしても等級が下がることはありません。車両の傷が小さければ車両保険を使わずに実費で修理費を支払ったほうがお得なケースもあります。
上記のような事故を起こした場合に車両保険を使って等級が下がった場合と保険を使わなかった場合の保険料を比較してみてみましょう。
例)年間保険料6万、7等級で事故を起こした場合(概算)
保険を使った場合 | 使わなかった場合 | |
---|---|---|
1年後 | 事故有 4等級 73,500円 |
8等級 45,000円 |
2年後 | 事故有 5等級 65,250円 |
9等級 42,750円 |
3年後 | 事故有 6等級 60,750円 |
10等級 41,250円 |
事故後3年間 保険料合計 |
199,500円 | 129,000円 |
このように、事故後3年間でこのように保険料に差が出てきます。
3年目以降は「事故有」ではなくなりますがそれでも等級は差が開いたままです。そのため、4年目からも少しではありますが保険料に差が出ることとなります。
保険を使わないほうが結果的に安くなるケースが多い
上記の表では3等級ダウンの事故により、その後3年間で保険を使ったケースと使わなかったケースでは70,500円の差が出ることとなりました。
つまり、車両保険でこの70,500円以下の補償を受けると損をしてしまうということになります。あくまでも一例ではありますが、ほとんどの場合はこの考え方が当てはまります。
数万円の修理代に保険を使ってしまうと、例のように損をする可能性が高くなるので注意しておきましょう。
車両保険は見返りが小さい保険
ご紹介したように、数万円程度の修理代であれば車両保険を使わない方が良いケースであることがほとんどです。
つまり自動車保険は廃車状態になる全損事故のような大きな事故以外では使用しない方が良いと言えます。軽微な事故の場合は保険を使用しないようにしておきましょう。
しかしたとえ全損事故であっても車両保険は他の補償や対人対物などに比べて補償額が小さくなる傾向にあります。
例えば人身事故や物損事故を起こした場合は、相手を死亡させたり後遺障害が残ってしまうと億単位の補償が必要になる可能性があります。
一方車両保険は自分の車の取得価格以上の保険は下りることがありません。200万円の車に車両保険を掛ければ最大で200万円しか補償されません。
かけている保険料に対して補償される金額の割合が低くなるため、対人対物などと比べると車両保険は「見返りの小さい保険」であると言えます。
まとめ:車両保険は本当に必要?
車両保険は億単位になる可能性がある対人・対物に比べると「絶対に入っておくべき保険」とは言えません。
特に車両の価格が低い場合や、ローンが残っているわけではない場合・もし廃車になったら新しい車を購入する予定である。という場合は加入する必要はないでしょう。
しかし以下のような場合は、車両保険に加入しておいた方が良い場合もあります。
- 新車を購入と同時に保険に加入する
- ローンが残っている
- 車両価格が高額
- 車が廃車等でなくなると困る、新車購入費は用意できそうにない
ローンが残っているのに車両保険に入っておらず、廃車になってしまうとまた新たに車両を購入しなければならず、ローンが二重になる可能性もあります。こういった場合に備えるには車両保険に加入しておくべきでしょう。
ただし、数万円の保険は使うべきではないので車両保険に加入しても保険を使うのは廃車状態になった場合や、数百万などの高額な修理費がかかる場合のみにしておきましょう。
保険を使う場合はその後の保険料のシミュレーションも行っておくといいでしょう。
車両保険は高くなりがちですが、ベースの保険料が安いダイレクト型保険に加入しておけば安く抑えることも可能です。
新車購入やローンが残っているなどの理由で車両保険が必要な場合は、各社で見積もりを取ってから保険に加入したり見直し・乗り換えをすることをおすすめします。