自動車保険の特約

自動車保険でよく言われる人身傷害保険とは?

自動車保険の「人身傷害保険」は加入者の約90%がつけている補償です。

人身傷害保険対人対物補償に次いで重要と考えられている補償なので、基本的には付けておいた方がいいと言えるでしょう。

しかし、補償を付ける際には「設定金額」や「補償の重複が無いか」という点をチェックするなどいくつか注意しなけばならない点があります。

本ページでは「人身傷害保険とは何か?という基本的な部分から加入する際の注意点や搭乗者傷害保険との違い、保険料の相場について」解説します。

人身傷害保険とは?

まずは「人身傷害保険の概要について」解説します。

人身傷害保険は簡単に言えば事故で自分が受けた損害に対する補償のことです。

自動車保険は基本的に車に掛けるという考え方が正しいですが、人身傷害保険はどちらかというとに掛ける保険です。

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そのためここでいう「事故」とは車に乗っている場合以外の事故にも適応されることがあり、自分だけでなく家族も補償対象となることがあります。要点をまとめると以下の3点となります。

  1. 事故した相手ではなく、自分及び自分の家族に対する補償が受けられる
  2. 過失割合に関わらず「損害額全額」が補償される
  3. 乗車中に関わらず補償

この3つの要点について詳しく解説していきます。

自分自身に対する保険

人身傷害保険は「自分自身に対する補償が受けられる保険」です。自動車保険は大きく分けると以下の4つの補償で出来ています。

  1. 事故をした相手に対する保障…対人補償や対物補償など
  2. 自分自身や家族が受けた損害に対する補償…人身傷害補償など
  3. 自分の車に対する補償…車両補償など
  4. その他各種特約

人身傷害保険はこの2番に当てはまる保障です。具体的にはケガをして入院や通院した場合・後遺障害を負ってしまった場合・死亡した場合などに保険金が支払われます。

  • 入院や通院…治療費等の実費・働けない場合の休業損害
  • 後遺障害…働けなくなることで失った将来の収入等の利益損害・介護費用
  • 死亡…治療費・亡くなることで失った将来の収入等の利益損害・葬祭費用

その他「精神的損害」に関しても保険金が支払われます。

金額の基準はそれぞれの保険会社が設定している規約によって決められます。

治療費などかかった金額がハッキリしているものは実費が補償されます。事故をした相手が支払うべきである賠償金に関しては保険会社が相手側に請求します。

過失割合に関わらず補償される保険

人身傷害の大きな特徴となるのが過失割合に関わらず実際の損害額が保障されるという点です。このような保険を「完全補償タイプ」と呼びます。

通常、自動車保険は過失が相手の過失と自分の過失が相殺されて補償額が決定されます。

例えば事故によりケガをして治療費がかかっても、自分に100%過失がある場合は事故の相手には何も支払う義務はありません。そのため治療費などは自己負担となります。

また、過失が50:50である場合はかかった損害額に対する責任も50:50となります。例えば治療費等の合計の賠償が5000万円で相手の過失が50%・自分の過失が50%だとします。この場合は半分の2500万円が相手から賠償額として支払われます。

残りの5割である2500万円は自己負担額として自分で支払わなければなりません。

しかし人身傷害補償をつけていれば自己負担額は不要となり、まとめて5000万円の損害額を受け取ることができます。

事故相手との交渉もしてくれる場合が多い

事故の負担割合がすぐに決まれば、損害金は比較的早く受け取ることが可能です。

しかし相手方との交渉がうまく進まず、事故の負担割合が決まらないと損害金の支払いに時間がかかってしまいます。賠償金が支払われないと、医療費の支払いが間に合わなくなるといった可能性もあります。

しかし人身傷害補償をつけていれば負担割合が決まる前に、保険会社が損害金を先払いしてくれる場合があります。

参考外部サイト:人身傷害|大人の自動車保険より

歩行中や自転車に乗っている時の事故でも補償される

人身傷害補償は車に乗っているときに起きた事故だけではなく、歩行中や自転車に乗っている時の事故でも補償されることがあります。

補償される範囲は保険によって少し違いますが、具体的には以下のような場合でも補償が受けられます。

  • 歩行中に自分や家族が車に轢かれた
  • 自転車での走行中に自分や家族が車に轢かれた
  • 歩行中に自分や家族が自転車にぶつかった
  • 自転車での走行中に転んだ
  • 他の車を運転している時に事故をした
  • 公共交通機関を利用時に自分や家族が事故にあった

保険会社によっては一部補償されないケースがあることもありますが、基本的にはどんな形であっても「事故」が起きれば補償を受けることが可能です。

一部の保険会社では以下の2つから選ぶことができます。

  • 「歩行中も補償されるタイプ」
  • 「搭乗中のみ補償されるタイプ」

搭乗中のみにすれば保険料は下がります。1つの家庭で2台以上の車を持っている場合は補償内容が重複する可能性があります。この「搭乗中のみ保障」となる人身傷害保険を活用すればお得になるのでチェックしておきましょう。

自分だけでなく家族も補償される

また、人身傷害補償は自分だけでなく家族が事故をしてしまったときにも保障されます。補償対象となる方は保険によって微妙に違いますが、ほとんどの保険で以下の通りになっています。

  • 被保険者
  • 配偶者(内縁の妻を含む)
  • 子供や親など同居の家族
  • 別居している未婚の子供
  • 車に搭乗中の人

配偶者や家族の場合は歩行中や自転車に乗っている時の事故でも補償されます。
また、他人であっても契約している自動車に乗っていて起きた事故なら補償の対象内となる場合がほとんどです。

<人身傷害保険で補償される対象者と事故の種類>

  記名被保険者・家族 その他
契約自動車に搭乗中の事故
契約外の自動車に搭乗中の事故 ×
歩行中の事故 ×
自転車での事故 ×

参考外部サイト:アクサダイレクト|人身傷害補償特約

搭乗者傷害保険との違いは?

人身傷害保険と同様の保険で「搭乗者傷害保険」というものがあります。自動車事故によるケガや後遺障害、死亡で受けた損害を補償するという点は人身傷害保険と全く同じです。

しかし補償される金額の計算方法や補償対象となる範囲に違いがあります。

搭乗者傷害保険は「乗車中」のみ保障される

人身傷害保険「歩行中」や「自転車で走行中」の事故でも補償対象となる場合がほとんどです。しかし搭乗者傷害保険は契約中の車に「乗車中」の事故のみが保障されます。

人身傷害保険は「にかけるもので、搭乗者傷害保険は同乗者(車に乗っている人)」にかけるものだと覚えておくといいでしょう。

補償される金額が違う

人身傷害・搭乗者傷害は補償される金額の計算方法や支払い内容が違います。

  • 人身傷害「実際にかかった損害額に対する補償金」が支払われる。
  • 搭乗者障害は「あらかじめ決められた定額の補償金」が支払われる。

搭乗者傷害で支払われる補償金の金額は保険によって異なります。支払われる補償金は主に以下の2つに分けられます。

  • 死亡・後遺障害の保険金
  • 入通院にかかる一時金

死亡・後遺障害の保険金は会社によって金額が異なりますが、ほとんどの場合500万~2000万円ほどの間で設定します。補償金額が高くなるほど保険料も高くなります。

入通院にかかる一時金はほとんどの保険会社で「4日以内なら一律1万円」「5日以上は10万~」となっています。2015年9月30日以前は5日以上の入院通院はケガの部位や症状によって「骨折なら30万」「脳挫傷なら100万」といったように保険金額が変わっていました。

しかし、2015年10月1日以降の契約ではケガの部位や症状を問わず一律の保険金が支払われている場合が多いです。

一部の保険会社では現在も部位や症状別に保険金額が異なる場合があるのでチェックしておきましょう。

人気の3社の搭乗者傷害保険の保険金額は以下の通りです。

  • セゾン自動車火災保険
  • SBI損保
  • 三井ダイレクト

セゾン自動車火災保険

  • 入院・通院…4日以内 1万円 / 5日以上 10~100万円
  • 死亡・後遺障害…500万~2000万の間で設定する

SBI損保

  • 入院・通院…4日以内 1万円 / 5日以上 10万
  • 死亡・後遺障害…500万~2000万の間で設定する

三井ダイレクト

  • 入院・通院…4日以内 1万円 / 5日以上 10万
  • 死亡・後遺障害…300万~2000万の間で設定する

保険金が支払われるタイミングが違う

人身傷害保険は実際にどのくらいの損害額がかかったのか、計算ができてから支払われます

そのため実際に治療費を支払うまでの間に保険金がおりず、一度自分で治療費を負担しなければならない場合があります。

搭乗者傷害保険定額なのでかかった金額がいくらになるのか待たなくても保険金が支払われます。

ケガの症状が軽い場合や治療までの時間がハッキリしている場合などは特にスピーディーに支払いが行われます。

窓口で実際に支払うまでの間に保険金が受け取れる可能性があるので、一時的にでもまとまった金額が用意できそうにない場合は非常に便利です。

どちらか一方の補償で十分

「人身傷害保険と搭乗者傷害保険のどちらに加入すればいいの?」と疑問を抱いている方も多いでしょう。

保険会社の多くは両方に加入することを勧めています。人身傷害保険と搭乗者傷害保険をセットにして加入を勧める保険会社も少なくありません。

しかし無理に二つとも加入する必要はなく、どちらか一方に加入していれば十分だと言えます。

基本的には補償される金額が「実際の損害額」となる人身傷害保険がオススメです。

搭乗者傷害保険は定額制で保険料も安い傾向にありますが、実際におりる保険金額は医療費だと数万~100万円ほどです。これなら保険に加入せずに普通に貯蓄ができる金額です。

搭乗者傷害保険人身傷害保険に+する追加の補償のようなものなので必ずしも加入すべき保険とは言えません

もちろん、両方に加入していればより手厚い補償が受けられます。

しかし「できるだけ無駄なく補償を受けたい」「本当に必要な保障だけを受けたい」と考えている方には人身傷害保険だけの加入がオススメです。

2台目の車や家族が既に加入済みの場合は搭乗者傷害保険がオススメ

1つの家庭で2台以上の車を持っている場合は、車1台ずつに人身傷害保険をかけると補償が重複してしまいます。

補償が重複すると無駄が生じてしまうので、その場合1台は人身傷害保険に加入しておいて、もう1台は搭乗者傷害保険にするという方法もあります。

また、人身傷害保険の中には「搭乗中のみ」と保障される範囲が限定されているプランもあります。

このプランの人身傷害保険を使えば補償が重複することもありませんし、搭乗者傷害より高い金額の保険金がおりる可能性があります。

ただし、保険料は高くなる場合があります。きちんと見積もりをしてから検討しましょう。

人身傷害保険の保険料の相場は?

人身傷害保険にかかる保険料の相場は約5000円前後です。等級によっても金額は大きく変わります。

例)25歳 7等級 普通自動車の場合 人身傷害保険3000万円
三井ダイレクト:6,640円/年
大人の自動車保険:6,750円/年

保険会社にもよりますが、補償金額は2000万~1億・無制限で設定が可能です。

自分の命に関わる保障なので高い金額をかけたいと思いがちです。一般的には、3000万円に設定する人が圧倒的に多くなっています。

参考外部サイト:人身傷害の保険金額はいくらにすればいいの|ソニー損保

3000万円あれば事故によるケガや休業による損害のほとんどはカバーされます。しかし事故で死亡した時や後遺障害になってしまった場合は3000万では足りません。

しかし、死亡した時や後遺障害になってしまった場合の補償は生命保険でまかなえます。生命保険でしっかり備えているなら、人身傷害保険で「死亡・後遺障害」に備える必要はありません。

人身傷害保険で補償される金額は「事故をしたときのケガや休業補償のためのもの」と考えれば3000万に設定しておけば十分だと言えます。

まとめ

人身傷害保険はどの保険会社も基本的な部分は同じで、オプションで加入することとなっています。

補償内容が手厚いため多くの人が加入していますが、搭乗者障害保険個人賠償特約(自動車事故以外で起こした事故を補償する特約)等、他のオプションと補償内容が被ることがあるので注意が必要です。

少しでも効率よく保険を掛けたければ補償内容を十分理解してプランを選ぶことをおすすめます。

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