学資保険は生命保険会社が販売する保険商品ですが、生命保険を支払った際には生命保険料控除により所得税や住民税を引き下げることができます。
年末調整や確定申告では、保険会社から送られる生命保険料控除証明書を提出することにより、税金が戻ってくることが多いのですが、学資保険を支払った場合でも生命保険料控除をうけることはできます。
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生命保険料控除のしくみ
生命保険料控除のしくみは複雑なので、その基本からまずはふれていきますね。
多くの人は収入を得て生活しますが、そこから税金を支払う義務があります。収入から諸経費を差し引いた所得を、年単位で年末調整や確定申告を通じて確定させます。
収入ー諸経費=所得
給与であれば毎月税金は差し引かれますが、年末調整により差し引かれた税金が戻ってくるのが一般的です。
諸経費とは自営業者であれば事業にかかった経費。
給与所得者や年金生活者であれば収入額に応じた額になりますが、さらに法律で決められた様々な控除(所得控除)を差し引けます。
生命保険料控除とは所得控除の一種に該当します。
年末調整や確定申告で証明書を提出することにより、所得を軽減させることになり、所得が減ればそれに掛かる税金も下がる。つまり節税となるわけです。
平成23年以前は2分類
もともと生命保険料控除は個人年金保険の保険料を支払った場合の控除にあたる個人年金保険料控除とそれ以外の生命保険(損害保険会社が販売できる医療保険・所得補償保険も含む)を支払った場合の控除に当たる(一般)生命保険料控除の二種類でした。(下記表1参照)
<表1 平成23年以前の分類>
控除枠 | 対象となる主な保険の種類 |
---|---|
旧生命保険料控除 | 死亡保険、学資保険、 医療保険、介護保険、所得補償保険等 |
旧個人年金保険料控除 | 個人年金保険等 |
学資保険は個人年金保険とは異なるので、一般生命保険料控除の対象となります。
所得控除には、社会保険料控除のように全額控除もあるのですが、生命保険料控除の場合は下記の算式で控除額を計算します。これは所得税の算式が表2であり、住民税の算式が表3で算式が異なります。
<表2 所得税の旧生命保険料控除額>
年間の支払保険料 | 所得控除額 |
---|---|
2.5万円以下 | 支払保険料等の全額 |
2.5万円~5万円 | 支払保険料等×1/2+1.25万円 |
5万円~10万円 | 支払保険料等×1/4+2.5万円 |
10万円以上 | 一律5万円 |
<表3 住民税の旧生命保険料控除額>
年間の支払保険料 | 所得控除額 |
---|---|
1.5万円以下 | 支払保険料等の全額 |
1.5万円~4万円 | 支払保険料等×1/2+7.5千円 |
4万円~7万円 | 支払保険料等×1/4+1.75万円 |
7万円以上 | 一律3.5万円 |
支払保険料の全額になる場合もありますが、原則は一部になり、所得税であれば10万円以上の支払は5万円にしかなりません。
また個人年金保険料控除と一般生命保険料控除のそれぞれで計算します。
例えば個人年金保険料で年間12万円、学資保険で年間12万円支払ったとすれば、所得税の場合は、個人年金保険料控除が5万円、一般生命保険料控除が5万円と計算され、あわせて10万円控除できます。
住民税の場合は個人年金保険料控除・一般生命保険料控除がそれぞれ3.5万円、合計7万円控除されます。
平成24年以後は3分類となり複雑な計算に
平成24年には生命保険料控除に関する改正が行われ、生命保険料控除は2分類から3分類になりました。
損害保険会社も扱える医療保険や介護保険などは、一般生命保険料控除とは別枠の介護医療保険料控除の対象となり、学資保険や死亡保険などは一般生命保険料控除のままになりました。個人年金保険料控除については変更ありません。(下記表4)
<表4 新生命保険料控除の種類>
控除枠 | 対象となる主な保険の種類 |
---|---|
一般生命保険料控除 | 死亡保険、学資保険等 |
個人年金保険料控除 | 個人年金保険等 |
介護医療保険料控除 | 医療保険、介護保険、所得補償保険等 |
所得税の算式が表5であり、住民税の算式が表6となります。
<表5 所得税の新生命保険料控除額>
年間の支払保険料 | 所得控除額 |
---|---|
2万円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万円~4万円 | 支払保険料等×1/2+1万円 |
4万円~8万円 | 支払保険料等×1/4+2万円 |
8万円以上 | 一律4万円 |
<表6 住民税の新生命保険料控除額>
年間の支払い保険料 | 所得控除額 |
---|---|
1.2万円以下 | 保険料の全額 |
1.2万円~3.2万円 | 保険料×1/2+6千円 |
3.2万円~5.6万円 | 保険料×1/4+1.4万円 |
5.6万円以上 | 一律2.8万円 |
こちらも3つの控除それぞれで計算することになりますが、それぞれの控除額が平成23年以前より縮小されています。
ただし3つの控除を合計すると、最大では所得税では12万円、住民税では7万円控除できます。
両者をあわせた計算例1
現在知っておけばいいのは表4~表6だけで、表1~表3は過去の話というわけではありません。
表4~表6が適用されるのは、平成24年以降に新規または更新で契約した保険に限られており、平成23年以前契約の保険は表1~表3が適用されるのです。
前者は新契約の生命保険料控除、後者は旧契約の生命保険料控除として区別されています。
保険が平成23年以前契約だけ、平成24年以降契約だけの人は計算がまだ単純ですが、両者が混じっている人は計算が複雑になります。
まず、下記のケースを考えます。
保険の種類 | 年間保険料 | 契約年 |
---|---|---|
学資保険 | 6万円 | 平成22年(旧) |
死亡保険 | 12万円 | 平成24年(新) |
医療保険 | 6万円 | 平成22年(旧) |
個人年金保険 | 12万円 | 平成23年(旧) |
所得税の控除額から先に計算しましょう。
死亡保険は新契約に該当し、一般生命保険料控除の枠で4万円が控除額になります。学資保険と医療保険は旧契約の一般生命保険料控除に該当し、合算して年12万円のため5万円が控除額になります。
個人年金保険は旧契約の個人年金保険料控除に該当し、5万円が控除額です。一般生命保険料控除は旧契約と新契約のどちらか大きい方が採用され、5万円になります。個人年金保険料控除とあわせて10万円が控除額となります。
住民税の控除額は、同様の計算方式により7万円となります。
両者をあわせた計算例2
計算例1とは医療保険の契約年だけ異なりますが、下記のケースを考えます。
保険の種類 | 年間保険料 | 契約年 |
---|---|---|
学資保険 | 6万円 | 平成22年(旧) |
死亡保険 | 12万円 | 平成24年(新) |
医療保険 | 6万円 | 平成25年(新) |
個人年金保険 | 12万円 | 平成23年(旧) |
こちらも所得税の控除額から計算しましょう。医療保険は新契約の介護医療保険料控除に該当し、控除額は35,000円と求まります。
旧契約の一般生命保険料控除は学資保険だけで4万円、新契約の一般生命保険料控除は死亡保険で計算例1と同じく4万円です。両方とも同額なので一般生命保険料控除は4万円となります。
個人年金保険料控除も計算例1と同様に5万円です。3つ足すと125,000円なのですが、3つ合計しての上限は12万円ですので注意してください。ただ医療保険が介護医療保険料控除に該当したため、計算例1よりも控除額が増えます。
住民税も同様に計算して上限額の7万円となります。
確定申告が必要な人、不要な人
生命保険料控除であれば給与所得者の場合年末調整でも可能です。会社から渡される年末調整の書類に記入して生命保険会社から届く書類を添付します。
確定申告に関しては「必要な人」と「不要な人」がいます。
給与所得者でも年収2,000万円を超える人は年末調整の対象外となり、確定申告が必要となります。その他副業等をやっていて、年末調整の対象となる給与所得以外に20万円を超える人は確定申告が必要とされています。
<確定申告が必要な人>
- 給与所得が年収2000万円を超える人
- 副業で給与所得以外で20万円を超える人
年金受給者に関しては原則、確定申告が必要とされています。しかし公的年金の収入が400万円以下で、それ以外の所得が20万円以下の場合は確定申告不要とされています。
ただし、給与や公的年金に付随する所得が20万円以下であっても0円で無い限りは、お住まいの自治体に対して住民税の申告は必要とされています。
自営業者など、給与や公的年金以外の所得だけがある人は、確定申告は必要になります。その他注意点は下記の通りです。
年末調整で足りるケース
所得控除を活用して所得を引き下げたいとき、扶養控除・配偶者控除・障害者控除・寡婦控除・寡夫控除といった人的控除を受ける場合は、年末調整の扶養控除等(異動)申告書に記載することで、控除を受けることができます。
生命保険料控除をはじめとして、地震保険料控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・配偶者特別控除を受けられる場合は、保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書に記載することにより、控除を受けることができます。
ふるさと納税を行った場合は5か所以内で、ふるさと納税ワンストップ特例を申請した場合は確定申告が不要になります。
年末調整では足りないケース
医療費控除や盗難・災害に遭った際に受ける雑損控除、そして上記ふるさと納税のケースを除く寄付金控除を行った場合は、年末調整では控除を受けることはできませんので、確定申告を行うことになります。
また年末調整で活用できる控除であっても、控除漏れを反映させるのに確定申告を行うこともできます。
このような場合は学資保険の控除は不要
先ほどの計算例の場合、学資保険を生命保険料控除の対象に加えなくても、計算例1において旧契約の一般生命保険料控除は、医療保険の12万円だけで控除額5万円になります。計算例2においても新契約の一般生命保険料控除は4万円であり、学資保険を加えても増えません。
年末調整で控除が漏れていたからと言って、わざわざ税務署へ行って確定申告を行ったとしても、いたずらに時間を使うだけです。
生命保険料控除には上限額が設定されていることに気をつけてください。
「生命保険に加入したいけどどれがお得なのかわからない」
「保険料の負担がきついから解約しようか迷っている」
「自分にとって一番最適な保険に入りたい」
現在日本で加入できる生命保険会社は数十社にのぼり、各社それぞれたくさんのプランを提供しているため、一人で保険選びをするのは非常に難しいです。
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