がん保険が必要かどうか議論されることは多いですが、その根拠として、がんで入院したときの費用のみを取りあげて説明していることが大半です。
しかし、がんは通院で治療することも多いので通院治療により生じる費用も考慮すべきですし、自由診療もあります。また、保険で備えるべきは「平均値」ではないという点にも注意する必要があります。
この記事ではがん保険の必要性について、世間一般とはやや異なるロジックで説明します。
Contents
がんにかかる確率と、がんという病気の特徴
まず、生涯でがんにかかる確率はどれくらいなのか確認しておきましょう。
国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」のデータによれば、生涯でがんにかかる確率は男性が62%、女性が47%です(2014年データ)。そのため、誰にとってもがんは他人事ではなく、備えについて考えておく必要があります。
がんが他の病気と違うのは、以下の2点です。
- 通院で治療を続けることが多い
- 一度かかると再発・転移する可能性がある
医療保険に加入している場合、さらにがん保険も加入する必要性があるのかと考える人も多いのではないでしょうか。
しかし医療保険は入院保険なので、入院したときにしか保険金(給付金)は支払われません。そのため、最初から通院のみで治療する場合は全くお金を受け取れないこともあります。
がんの治療費は高額になることもありますが、再発すると同じようにお金がかかる可能性があるという点も考慮する必要があるでしょう。
がんの治療にかかる費用
がんの備えを考えるうえでは、実際にかかるとどのくらいのお金がかかるのかを知る必要があります。ここでは入院でかかる費用と通院でかかる費用にわけて解説します。
入院でかかる費用
全日本病院協会が公表しているデータによると、胃がん、結腸がん・直腸がん(合わせて大腸がんといいます)、乳がんで入院した場合の費用(一部症例の集計)は以下のとおりです。
1入院の費用 | 症例数 | ||
胃の悪性新生物 | ステージⅠ | 1,105,120円 | 147 |
ステージⅡ | 1,666,558円 | 37 | |
ステージⅢ | 978,692円 | 29 | |
ステージⅣ | 725,711円 | 140 | |
結腸の悪性新生物 | ステージⅠ | 1,096,736円 | 78 |
ステージⅡ | 1,176,350円 | 85 | |
ステージⅢ | 824,618円 | 135 | |
ステージⅣ | 850,258円 | 161 | |
直腸の悪性新生物 | ステージⅠ | 1,352,984円 | 52 |
ステージⅡ | 1,284,973円 | 61 | |
ステージⅢ | 1,107,475円 | 83 | |
ステージⅣ | 784,999円 | 110 | |
乳房の悪性新生物 | ステージⅠ | 737,730円 | 61 |
ステージⅡ | 780,485円 | 100 | |
ステージⅢ | 756,608円 | 12 | |
ステージⅣ | 807,677円 | 14 |
この金額はあくまで病院で発生した金額で、個人で負担する金額ではありません。費用が高額なので3割負担ではなく、健康保険の高額療養費制度が適用されて自己負担額はおさえられます。
たとえば胃の悪性新生物・ステージⅢで入院した場合の費用は1,666,558円となっていますが、69歳以下の人が高額療養費制度を適用されると最終的に負担する金額は以下のようになります(自己負担額は収入によって変わります)。
- 区分ア(年収1160万円~)
252,600円+(1,666,558円-842,000円)×1%≒260,845円
- 区分イ(年収約770万円~約1160万円)
167,400円+(1,666,558円-558,000円)×1%≒178,485円
- 区分ウ(年収約370万円~約770万円)
80,100円+(1,666,558円-267,000円)×1%≒94,095円
- 区分エ(~年収約370万円)
57,600円
- 区分オ(住民税非課税者)
35,400円
高額療養費制度については厚生労働省の作成した文書をご覧ください。
参考:高額療養費制度を利用される皆さまへ|厚生労働省保険局
実際に支払う費用はこの金額に食費等の雑費や差額ベッド代が加算されますが、普通の人が貯蓄から支払えないような金額でないことがわかるでしょう。
厚生労働省の「患者調査(平成23年)」によると胃がんの平均在院日数は22.6日なので、差額ベッド代の支払いがあったとしても、1回の入院でかかるおよその費用は想像できるはずです。
いかに再発の可能性があると言っても、もしがんにかかってもこれくらいで済むなら、貯蓄がない人以外はがん保険に加入する必要性はそれほどないと言えるでしょう。
通院でかかる費用
しかし、通院で抗がん剤治療が続いた場合は意外と負担になることがあります。
すべての抗がん剤が高価というわけではなく、通院期間も長くなるとは限りませんが、場合によっては1年くらい続くこともあるようです。
株式会社エース・フォースが「がん治療費.com」というサイトで公開している治療費を参考に考えてみます。
このサイトには、胃がんの手術後に再発予防を目的として抗がん剤治療を約1年間、9クールにわけて行う場合の費用として1回約95,000円、総額約85万円という例が掲載されています。
この場合、1カ月で85万円の費用が発生したのであれば、自己負担額は先述した高額療養費制度を利用することでおさえられます。
しかし、高額療養費制度は月ごとに計算するので、この場合は95,000円×3割=28,500円の負担が9回生じることになり、合計で256,500円となります。
入院したあとに1年間でこうした負担が生じるとすると、区分ウの人なら入院費用と合わせて総額40万~50万程度の負担になると考えられます。
入院している間に収入が減る分もあるでしょうし、がんになると食生活を変えてそれまで以上のお金がかかることもあります。また、抗がん剤で髪の毛が抜けたことでウィッグを使用するなどさまざまな負担があります。そのため、余裕を見て備えておくことが大事です。
自由診療を利用すると、治療費はケタ違いの高額になることがある
がんの治療で高額な自己負担が生じる可能性があるのは、自由診療を利用するときです。
20代や30代で末期がんと診断された場合、何が何でも治したいと考えるものです。もちろんこれは人生観の問題なので、若い人ばかりではなくそれ以上の年齢になっても同様の人はいるでしょう。
そんなとき、どこの病院へ行っても健康保険が使える治療法では治せないと言われると、多くの人は自由診療も視野に入れるようです。
自由診療には効果の期待できないものも多いので利用するときは細心の注意を払う必要がありますが、海外では承認されているのに国内で未承認となっている抗がん剤だとしたらどうでしょうか。
こうした抗がん剤を使用する場合、薬剤費だけで月に100万円を超えることもあります。実際の例は国立がん研究センターがサイトで公開しています。
参考:国内で薬事法上未承認・適応外となる医薬品・適応のリスト(2018年9月27日版)|国立がん研究センター
これを見ると一番安いものでも月に10万円台ですし、中には5000万円くらいするものがあります。
がん保険は診断一時金を受け取れるタイプの商品が一般的ですが、加入するときの保険金額は高くても300万円程度なので、足りないことがほとんどでしょう。
保険を考えるときは平均値を見るのではなく、最大値を確率とともに見ることが必要です。
5000万円の抗がん剤を利用すると治るかもしれないというケースはまれなので、さすがにそこまで考慮する人はいないでしょう。
しかし、ある程度は自由診療も視野に入れておきたいのであれば、自由診療を保障してくれるタイプのがん保険が有効です。
自由診療にも備えられるがん保険3選
ここでは自由診療を保障の対象としているがん保険を3つ、紹介しておきます。
「SBI損保のがん保険 自由診療タイプ」(SBI損害保険)
SBI損保のがん保険は保険診療か自由診療かにかかわらず、治療にかかった費用を実額で1000万円まで補償してくれます。契約は5年更新なので、この1000万円という金額は5年ごとの金額となります。
実額補償なので入院や通院1日につきいくらという形での保険金はありませんが、1000万円という金額はいざというときの選択肢を広げてくれるでしょう。
なお、保険料は5年ごとに上がるという点に注意してください。
公式サイト: SBI損保のがん保険 自由診療タイプ|SBI損害保険
「メディコム」(セコム損害保険)
メディコムもSBI損保のがん保険と同様、治療にかかった費用を実額で最大1000万円まで補償してくれます。
補償される自由診療はセコム損保と提携している協定病院やがん診療連携拠点病院などで、SBI損保のがん保険とおおよそ似ています。
こちらも5年更新なので、保険料が5年ごとに上がる点には注意しておいてください。
公式サイト:メディコム|セコム損害保険
「終身ガン治療保険プレミアムDX」(チューリッヒ生命)
プレミアムDXは上記2つのがん保険とは少し違い、自由診療で抗がん剤とホルモン剤治療を受けたときに給付金が支払われます。
こちらは実額での保障ではなく、基準給付月額(10万円~30万円で設定)の2倍を毎月支払うという形で、通算2000万円まで保障されます。
なお、総額ではSBI損保やセコム損保のがん保険よりも多いのですが、毎月のしばりがある点に注意が必要です。
公式サイト:終身ガン治療保険プレミアムDX|チューリッヒ生命
まとめ
がんの治療を保険診療だけで済ませようと考える場合、貯蓄があればがん保険の必要性はそれほど高くないと言えます。
しかし、がんにかかったときに負担する費用が平均的な水準になるとは限りません。そのため備えというのは余裕を見ておくべきです。
たとえばがんにかかったときの治療費平均が50万円とすると、50万円を用意しておけば良いということではなく最大でいくらくらいかかりそうか考え、平均よりも高くなっても支払えるようにしておくのが本当の備えです。その手段としてがん保険は検討に値するということです。
高額な抗がん剤については利用する確率も低いので判断に個人差が出るでしょうが、備えを考えるときは予想よりも高くなったときのことを考えておきましょう。
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