資産運用

年金が破たんするから将来のために貯蓄するという考え方はおかしい

年金が破たんするかもしれないから個人年金に加入しようとか、将来に備えようと考える人は多いです。

会社員は半ば強制的に厚生年金に加入させられるので年金を払っていない人はいませんが、自営業者等は「どうせもらえないから」と言って年金を払わない人は少なくありません。

国民年金(主に自営業者やフリーター等が加入する年金)の有資格者のうち実に4割近い人が払っていません

情報元:国民年金納付率63%に改善 14年度、実質は40%で横ばい |日本経済新聞

テレビの情報番組等でも報道されていますが本当に年金は破たんするのでしょうか。

なぜ年金が破たんすると言われるのか

なぜ年金が破たんすると言われているのかといえば、口構造が少子高齢化に向かっているからです。

年金制度には以下2つがあります。

  • 賦課方式(ふかほうしき):現役世代の負担を元に高齢者に支給する
  • 積立方式:現役世代1人1人が支払った保険料を運用して将来給付する

日本の公的年金制度は「賦課方式」です。

少子高齢化では保険料を負担する現役世代が少なくなり、年金をもらう高齢者が増えます。

年金財政が苦しくなっているので、実際に保険料を上げたり、年金の受給開始年齢引き上げを検討したりする動きは出ています。

しかし公的年金制度自体は簡単に破たんさせられるものではありません。その理由を探ってみます。

「破たん」だけはさせられない事情

法律的な観点からいえば払っていた年金がもらえなくなるというのは、もらう権利を反故にすることになります。ほぼ確実に憲法違反で国が集団訴訟を起こされます(制度的に年金減額した時にすら憲法違反で訴訟が起きています。)

また日本年金機構や厚生労働省などの機関において、年金に関わっている公務員・労働者を考えると、制度が破たんすることで責任をとる人が数多く出てきます

そのような責任回避のために、関係者はさすがに破たんさせられないというように動きます。

加えて(悪く言えば)年金にまつわる利権を維持したいという気持ちもどこかあります。年金減額のように受給者に不利に動くことはあっても、破たんだけは防ごうとするのです。

年金以外のサービスが先に削られる

年金制度における収入は年金保険料、支出は高齢者などがもらう年金だけだと思う人もいるかもしれません。

しかし消費税増税における論議にも出てきたように、年金は国税からの収入を使ってでも維持されている制度です。消費税自体、社会保障に充てる税とされており、それだけ年金などの社会保障は重要な制度です。

ここまでして維持しているのに年金を支払えないとなれば、国民に対する裏切りでしょう。

年金の破たんは国の破たん

年金以外の国営美術館や図書館などの公共サービスが先に削られることになるでしょう。

年金が破たんする時は銀行、保険会社が破たんする時

年金の破たんに関して「金融の観点」から見ていきましょう。

国民が払っている年金保険料の残高は年金積立金という資産になっており「150兆円程度はある」と言われています。

参考記事:年金積立金、過去最高153兆円 昨年度 | 日本経済新聞

これは現金で保有しているわけではなく運用をGPIFに委託しています。投資先は平成29年12月末時点で国内債券が3割程度、国内株式3割程度で、その他外国の金融商品にも投資しています。

GPIF:日本の公的年金(厚生年金と国民年金の年金積立金)を管理・運用する機関のこと

参考記事:年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)資料

ちなみに生命保険会社は国債で50%弱、国内社債含めて50%超の投資をしています。

GPIFは株式比率を増やす傾向にはありますが、GPIFも金融機関も様々な金融商品に投資していることには変わりません。またその多くは国内債券に投資しています。

国債についても財政破たんにより暴落するという危険性が指摘されていますが、金利が急上昇し価値が暴落する動きはほぼ見られません

むしろ日本銀行はマイナス金利政策の行き過ぎで長期金利がマイナスになることが無いよう対策をとろうとしているぐらいです。この影響でGPIFや保険会社の投資において、債券比率が高まる可能性はあります。

仮に国債が暴落した場合は以下のようになります。

  1. 国債が暴落
  2. 年金が破綻
  3. 国債を大量に保有している金融機関が破綻
  4. 日本の破綻
  5. 結果:現預金やかけてきた保険などのあらゆる資産の価値がなくなる

年金を払わずに貯金しても意味は無い

年金が破たんし受給する権利が無くなった場合、年金制度以外の国のサービスが無くなることが予想されます。

また銀行や保険会社などの金融機関が破たんし、あらゆる金融商品の価値も無くなることでしょう。この場合、これは国の破たんを意味するのではないでしょうか。

預貯金にしても年金にしても、お金は巡り巡って国債など同じような金融商品に投資しています。年金が破たんするからもしれないから預貯金に回そうといいうのは、あまり意味のない話にみえます。

年金はおよそ10年受給すれば元がとれると言われています。非常に安全な金融資産と言えるのではないでしょうか。

年金を払わない危険性

最後に、年金を払わないことがどれほど危険なことか説明しましょう。

もらえる年金額:支払った額に応じて増減するような制度

国民年金は20歳から60歳の間で未納になった月数だけ減額されますし、厚生年金は加入月数と在職時の給与に応じて年金額が決まります

保険料を多く払えばそれだけ保障額が大きくなるというのは、民間の保険を契約していればわかると思います。

公的年金の支払いは国民の義務:滞納分の督促を無視は最悪財産(主に預貯金)が差し押さえられるということにつながる。自己破産しても滞納文の支払が免除されるわけではない。

国民に支払いを約束している年金が支払えなくなるというのは、憲法上の生存権にも影響してきますので、例え減額だったとしても憲法違反で国が訴えられるリスクがあります。

それだけに国民にも支払う義務(それも財産差し押さえも辞さず、破産免責もされない重たい義務)を課していることを忘れてはいけません。

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